「原子炉立地審査指針」と市街地にある東海第二原子力発電所の危険性

2020/09/27

原子力 東海第二原発

福島第一事故の後、原子力規制委員会は原子力発電所の安全を審査する基準を見直し、従来からある幾つかの審査項目の要件を強化し、また、テロ対策等を新たに追加したのは事実です。しかしこれと同時に、人口密集地では原子力発電所を立地したり、運転したりできないとしていた「原子炉立地審査指針」というものを廃止しました。これは、どんなに人口が密集した場所でも、原子力発電所を運転できるように基準を変えてしまったものです。

従来、この指針では立地条件のひとつとして、原子炉は、その安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること。」とありました。

 これを廃止した理由として、原子力規制委員会は、原子炉(炉心、格納容器)が破損するような問題点を具体的に想定し、その対策が有効であるかどうかを審査するように変更したためとしています。

 すなわち、原子力規制委員会は、市街地にある老朽化した東海第二原子力発電所などの延長稼働を考えると、厳密には適用することができない立地審査指針が障害になるため、新規制基準を要求するこの機会に厄介な立地審査指針を実質的に棚上げし、その代わりに自分達の裁量で自由に取り扱うことができるように、自らが策定する「設置許可基準規則」に無理やり置き換えました。これによって、どんな事故事象を想定し、どんな対策をどこまで要求するかは、規制委員会が自らの裁量で自由に変更できます。


 しかし、この「設置許可基準規則」は、立地審査指針とは全く異質なものであり、何ら等価でもありません例えば、新型コロナウイルスの流行は誰も具体的には想定していませんでしたが、実際に起こりました。どんなに対策をしても、立地そのものを制限することの代わりにはなりません。また、事故対策の内容が本当に十分なものかどうかは、最終的には実際の結果でしか確認できません。


東海第二原子力発電所は市街地の中にあり、その半径30km以内に約94万人が生活しています。大きな事故が起これば、30kmをはるかに超えて重大な被害を受けます。また、約4000万人が生活する首都圏も、僅か100kmほどしか離れていません。大きな事故が起こる可能性は確かにあり、多くの一般市民が確実に重大な被害を受けます。

「原子炉立地審査指針」ではなく、東海第二原子力発電所を廃止するのが先ではないでしょうか

福島第一原子力発電所の4号原子炉(出典:東京電力ホールディングス)

※参考資料:

・「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」、平成28年6月29日策定、平成30年12月19日改訂、p.379~389