大きな原子力事故が起これば、市民は必ず放射線で被ばくする

2020/09/28

原子力 東海再処理 東海第二原発

 内閣府が作成した「原子力災害発生時の防護措置」によれば、原子力発電所で大きな事故が起こった場合、避難することで高齢者等に健康上の影響をもたらす可能性が高く、また、交通渋滞やパニックに伴う事故等の危険があるとしています。

そのうえで、発電所から5km以内(PAZ)の市民は、放射性物質が放出される前に避難するが、要援護者は無理に避難せず、屋内退避が有効であるとしています。また、発電所から30km以内(UPZ)の市民は、放射性プルームが通過する時に屋外で行動すると被ばくが増えるおそれがあるので、まずは屋内退避すべきであるとしています。さらに、UPZ外の市民については、プルームによる被ばくを避けるため、屋内退避を行うとしています。

木造住宅に退避すれば、プルームから受ける被ばくを10%減らすことができ、また、放射性物質の吸入による内部被ばくを1/4だけ減らせるとしています。


しかし、放射性物質の放出量は、放出源の状況(事故の内容、規模、状況等)によって大きく変わります。また、気象条件(風向、風速、降雨等)や、ひとり一人の市民が置かれた状況(屋外、屋内、家屋の状況等)、さらに、これらの時間的な経過次第で、個人の被ばく量は幾らでも変わります

どんなに精緻な計算をしても、実際に個人が受ける被害を誰も事前に確認できません。放射性物質の放出量が100倍になれば、被ばく量も100倍になるだけのことです。はっきりしていることは、大きな事故が起これば、市民は必ず被ばくするし、環境は汚染されるということです。

 国(内閣府、原子力規制委員会)は「原子力災害対策指針」などで方針を示すだけで、実際の対処は関係する自治体が何とかすることになっています。


 ちなみに、放射性プルームは一度だけ発生し、それが通過すれば何の問題もないかのような情報がありますが、そんなことはありません。例えば、福島第一事故では大きなプルームが何度も発生しています。

 事故の状況によっては、繰り返しプルームが発生し、いつ通過するかも全く予測できません。特に、再処理施設の場合は、高レベル放射性廃液がその発熱によって沸騰し、放射性物質を大気中に放出しながら蒸発して乾固する事故が想定されています。この事故では、1週間以上にわたって放射性プルームが発生すると想定されています。

福島第一原子力発電所の3号原子炉 (出典:東京電力ホールディングス)


主な参考資料:

・原子力災害時の事前対策における参考レベル(第4回)(原子力規制委員会).pdf

・原子力災害発生時の防護措置―放射線防護対策が講じられた施設等への屋内退避―について(内閣府).pdf