重大な原子力事故やテロに対処するための設備の基準が、余りにも曖昧ではないか

2020/09/29

原子力 東海再処理 東海第二原発

  国の原子力を規制する法律は、原子力基本法の下に「原子炉等規制法」があり、さらに「規則」があります。この規則の内のひとつである「再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」では、再処理施設で重大な事故などが発生したり、その拡大を防止するための設備が、本当に有効かどうかを判断する基準が設定されています。

 この基準は、もちろん原子力発電所の場合も全く同じで、放射性物質の環境中への放出量が、セシウム137換算して、「100テラベクレルを十分に下回ることとされています。ここで、100テラ ベクレル(TBq)というのは、10の14乗ベクレルです。


 この放射能の量は、福島第一事故で実際に放出された量の約1/100だそうですが、どうして1/100なのか、その根拠は良く分かりません。また、「十分に下回るというのはどのくらいなのか、どこにも記載されていません。

 福島第一事故の後、国内の原子力発電所や再処理施設は、新しい審査基準による許可審査が進められています。国はこの新しい基準が世界一厳しいものだと言っていますが、重大な事故に対処する設備の基準として、それほど厳しいものとは思いません。むしろ、日本の基準は余りにも曖昧ではないでしょうか。


 フランスでは、航空機によるテロ対策として、2001年10月に政府がラアーグにある再処理施設の周辺に設定していた飛行禁止区域を100mから10kmへ大幅に拡大し、さらにCROTALEという対空ミサイルを配置したと報告されています。


 最近国内では、幾つかの自治体で広域避難計画を作成したと報道されています。しかし、どれも、今後、実効性を高めて行くなどとしています。何時頃までに、どこまで高めるのかは不明で、まさに曖昧そのものです。

 フランスと全く同じことをする必要はありませんが、事故対策や広域避難計画などは、本当に実効性のあることを明確な基準で確認しなければ、見かけだけのものに過ぎません

福島第一原子力発電所の1号原子炉 (出典:東京電力ホールディングス)

主な参考資料:

・「再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則

・「再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」

・X. COEYTAUX et al., Airliner Crash on Nuclear Facilities The Sellafield Case, p.5, WISE-Paris, 29 October 2001.