全国の原発で増え続ける使用済み核燃料の貯蔵について

2020/11/23

原子力 東海再処理 東海第二原発

 日本原子力研究開発機構は、廃止措置中の「ふげん」原子炉の使用済み核燃料を2026年度までに福井県から持ち出すと地元に約束しており、フランスへ輸送して再処理するようです。また、分離されたプルトニウムはフランスに引き取ってもらう方向で、巨額の予算支出が始まっているとのことです。

一方、茨城県大洗町にある高速実験炉「常陽」については、地元との間で使用済み核燃料をサイト内に貯蔵するための取り決めがないにも拘らず、機構は再稼働を計画しています。


こうした状況に対して、政府の河野太郎氏(行政改革担当相)は、1114日の「秋の行政事業レビュー」の中で、使用済み核燃料を最終的にどう処分するかをきちんと決めた上で再稼働を考えなければ、また「ふげん」のように巨額の無駄な予算がかかると追及したとのことです。

・東京新聞 TOKYO Web20201121日):https://www.tokyo-np.co.jp/article/69742?rct=ibaraki

 

しかし、こうした状況は、既に全国の原発サイトではるかに大きな規模で起こっています。

我が国の政府が進めている原子力政策は、福島第一原発事故を経験した現在も、基本的には何ら変わっていませんし、むしろ、より一層従来の路線に固執して強引に進めようとしているように観えます。

再処理リサイクル路線や高レベル放射性廃棄物の最終的な処分などは、どちらも実現していません。全国の多くの原発サイトには、既に大量の使用済み核燃料が保管されており、多くのサイトでは、数年の保管余裕しかありません。

・各原子力発電所の使用済燃料の貯蔵量:https://www.ene100.jp/zumen/7-7-1

 

ちなみに、東海第二原子力発電所では、現在、約427トン(2020年現在、2165体)の使用済み核燃料を既に保管しており、現在進めている貯蔵キャスクの増設によって、ようやく約5年分の保管が可能になるようです。

・資源エネルギー庁:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/kanshiki_tyozou.html

 

今後、青森県大間町の中間貯蔵施設が稼働したとしても、多くの原発サイトでは、当面、使用済み核燃料はそのままで、行き場がありません。

また、いずれ六ケ所再処理工場が稼働したとしても、施設設備の構造や材質、それらの運転や保守も極めて複雑で、人の判断や操作に依存する部分が大きい施設です。もともと、再処理施設は、順調に稼働させること自体が非常に難しく、常に操業の状況を慎重に確認しながら、致命的なトラブルが発生しないように運転しなければならない施設です。


我が国は、長い間、上記のような重大な問題を先送りし、その時々の目先の都合でリサイクル路線を進めてきました。

しかし、こうした状況は一刻も早く転換して新たな使用済み燃料の発生を極力抑えると同時に、未来に希望の持てるエネルギー需給の在り方について、国を挙げて検討し、新しい方策を具体化する必要があります。遅くなればなるほど、将来世代の負担が増大するものと思います。