東海第二原発から30km圏内の6市村は、茨城県民に対して大きな責任を負っている

2020/11/29

原子力 東海第二原発

 1.老朽化した東海第二原発を稼働させれば、大きなリスクが残る

津波に対する防護のためで、東海第二原子力発電所の周辺を城壁のような防潮堤で取り囲み、まさに巨大な要塞を連想します。安全基準の一部を強化しただけで、これだけの安全対策工事を行わなければならないということは、逆に言えば、この施設がそれほどの凄まじい破壊力を秘めており、同時に、脆弱な側面もあることを端的に証明しています。


東海第二原発では、外部から来る地震や津波はもちろん大きな脅威です。しかし、それと同時に、施設自体の老朽化によって具体的には特定できなかった異常が発生し、それが重大な事故に拡大して強力な破壊力が解放されるリスクがあります。

また、原子力発電は確かに炭酸ガスを直接発生しませんが、その代わりに行き場のない使用済み核燃料が大量に発生します。今後、六ケ所再処理工場で再処理できたとしても、余剰のプルトニウムと高レベル放射性廃棄物が分離され、今度はそれらの処理・処分が問題になるだけです。政府や産業界の脱炭素キャンペーンは、原子力を安易に継続・拡大させる口実のように聞こえます。

 

2.少なくとも30km圏内の市町村は、全て立地自治体である

東海村は立地自治体として大きな権限を行使しており、東海第二原発の延長稼働に必要な対策工事について、茨城県とともに事前了解しています。

しかし、福島第一原子力発電所の事故によって、放射能による重大な汚染が30kmを超えて発生することが実証された以上、小さな東海村だけが立地自治体とはいえません。大きな事故が発生した場合に被害が及ぶ地域の範囲を考えれば、東海村は僅か数kmの小さな自治体であり、人口も30km圏内の94万人と比較しても4%に過ぎません。

行政区画としての立地自治体ではなく、重大な被害を受ける可能性のある30km圏内の14市町村は、実質的に全て立地自治体です。特に6市村は、現状でも原子力安全協定に基づいて再稼働を拒否することができます。

また、この30km圏内に住む94万人の住民について、無事に避難するために必要な「事前に実効性が確認された」広域避難計画を作ることは不可能です。また、何んとか避難できたとしても(屋内退避しても同じだが)、必ず被ばくします。

 

3.立地地域の全ての自治体は、県民に対して大きな責任を負う

もし東海第二原発が再稼働すれば、30km圏の内外を問わず、自らの意思に反して事故に対する不安の中で毎日を過ごすことを強制される茨城県民がたくさんいます。

こうした多くの一般市民に対して、茨城県知事はもちろんですが、東海村を初めとする6市村の首長は重大な責任があります。これら自治体、特に東海村は、電源立地地域対策交付金などに依存しない方向へ軌道を修正する大きな転換点にあると思います。

※衣笠達夫「原子力発電所と市町村財政」(20150315日)、追手門経済論集、http://www.i-repository.net/il/meta_pub/G0000145OTEMON_102150304


茨城県民、特に立地自治体の住民は、首長や議会議員及び茨城県知事の選挙に当たって、曖昧な言葉を使い分ける候補者ではなく、県民の意思を確認し、尊重し、安全を最優先する候補者を選出すれば、将来は大きく変わります。

 

4.日本原電には、今後100年は続く廃炉事業がある

東海第二原発と東海再処理施設は、それぞれ1978年及び1980年に本格操業を開始しており、後者は既に2018年6月から廃止措置を開始しています。

日本原電が東海第二原発を2038年11月の期限まで運転したとしても、企業としての発電事業は僅かの延命でしかありません。従来から日本原電は事業の一部として廃炉を実施しており、また既に国内では、24基の廃炉が確定しています。こうした状況を踏まえて、日本原電は、今後100年は続く国内の廃炉事業にその軸足を移す時期に来ています。